第一章 ドベ子、なぜか名門校に入学!

9/12
23人が本棚に入れています
本棚に追加
/137ページ
「……あのさ、そこ。オレの席なんだけど」  幸太の席に、ドベ子は座っていた。ドベ子はにっこりと笑った。 「ええーっ! 知ってたよー! 温めて置いたからね!」 「は? マジで言ってんの? オレ、そういう冗談、嫌いなんだよね」  幸太は、露骨に不機嫌な態度を示し、ドベ子に冷たく言い放った。 「ご、ごめんなさい」  ドベ子は深々と頭を下げて、眼鏡のパッドで鼻の頭をぐいと抑えた。ドベ子の眼鏡は特別製で、こうすると鼻孔が締まって、嗅覚が通常の人間並みに戻る。  シュンとしたまま、ドベ子は後ろの方の自分の席に座った。幸太は自席に座ると、おもむろに教科書を取り出し、読み始めた。 (幸太は、いつもああやって教科書を読んでるんだ)  入学式の件があって、ドベ子の存在は、既にクラスの中で認識されていた。それに元々、曽根崎中に変わった犬のような女がいるということは有名だった。
/137ページ

最初のコメントを投稿しよう!