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嘘でしょ。冗談よね。
ちょっと喧嘩しただけでしょ。
ちょっと拗ねてただけなの。
最近全然かまってくれないし、帰ってくるの毎日遅いし。仕事忙しいの分かってるけど、私の誕生日ぐらい一緒にいてくれてもいいでしょ。
ちょっと、意地悪したよ。帰って来るの待たずに寝たり。近寄ってきたら逃げたり。プチ家出したり。
でも、本当は寝たふりしてただけだし。毎日くっついていたいし。どこに行ったんだろうって心配して欲しかったし。ただ、かまって欲しかっただけなのに。だけなのに……
その隣の人は誰?可愛い人。楽しそう。お似合。
嘘でしょ。ただの後輩でしょ。ただの仕事仲間でしょ。
『彼女が好きなんだ』
嘘‼嘘でしょ。心臓が痛い。息ができないよ。苦しいよ。拗ねてた自分に後悔。あんな意地悪しなければ良かった。最悪。
嫌だ。嫌だ。嫌だぁぁぁ
ビックリして飛び起きた。
夢か。リアルな夢。嫌な夢。まだ、ドキドキしてる。心臓がドクドクしてる。ビックリしすぎて手足が震えてる。
ギューと背中にくっついた。
『ごめんな。最近かまってやれなくて。』
寝ぼけた声で、答えてくれた。やっぱり、仕事が忙しいだけだよね。後輩もできて、新しいプロジェクト任されたって言ってたし。
でも、嫌な嫌な夢だった。私がワガママ言い過ぎてたのよね。ごめんね、忙しいのにワガママ言って。そっと胸の中に埋もれた。
なんだか気持ちがスッキリした。
やっぱり、一緒がいい。仲良くしていたい。
今日は、久しぶりに休みなんだよね。ずっと一緒にいられるね。一日ゴロゴロしていようね。
『ピンポーン』
玄関チャイムが鳴った。
『いらっしゃい、まだ寝てたよ』
『ごめん、早く会いたくて』
玄関には、あの夢の中の女が立っていた。
二人はキスをして、ゆっくり振り返った。
『彼女が僕の大好きな人です』
満面の笑顔で彼が言った。
夢の中の女は、図々しく私の頭を撫でながら言った。
『可愛いネコちゃんね、名前何て言うの?』
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