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本棚の整理をしている最中に、いつの間にか図書室に何人かの生徒が来ていた。
そのほとんどが、三年生で勉強をしている。
僕は受付の中に入り、生徒が本を借りに来たり返しに来たりするのを待った。暇になるから、僕もそっと本を読むことにした。
静かな時間がゆっくりと流れていく。時々、廊下から生徒の声も聞こえてくる。外は相変わらず、部活生の賑やかな響き声が聞こえた。
どちらも僕にとっては、不愉快ではないし、居心地の良い音色だ。
ガラッと、また新たな新客が来たみたいだ。
受付に来る気配を感じ、本をカバンの中に入れた。
「こんにちは」
「あ……」
先輩だった。
先輩は、柔らかな笑顔を向けている。僕は昼間の出来事が頭を過ぎった。急に恥ずかしくなり顔をうつむき加減にして、会釈をした。
「ふふっ。さっきは、ごめんなさい」
先輩の申し訳なさそうな謝り声が聞こえた。僕はうつむいていた顔を上げ、先輩の表情を見た。
「やっと、顔上げてくれた」
「あのどうして謝るんですか? 僕が悪いのに……」
緩やかな風が図書室に入ってくる。静かな図書室だ、異様に僕の声が響いているような気がした。
でも、意外と誰もこちらには興味を示していない。ラッキーちゃラッキーなのかも。
「あなたの読書を邪魔してしまったからよ」
優しい声でそう言った。
「邪魔じゃなかったです」
先輩が隣に座ってくれて、嬉しかったです。なんて口が裂けても言えない。
「そっか。あ、受付の邪魔してごめんね。じゃあね」
先輩は受付から少し離れた、窓際の席に行ってしまった。カバンの中から大学受験の参考書を出しているのが見えた。
「あのすいません」
「はい?!」
受付の前に女子生徒が本を持っていた。
「この本借ります」
「あ、はい。分かりました。こちらのカードに借りた日付と返す日付を記入お願いします」
貸し出しカードを女子生徒に渡し書かせる。
書き終えると、女子生徒は本を持って帰って行った。
僕はスマホを取り出し、時間を確認した。
時刻は午後四時を過ぎていた。
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