エピローグ

3/10
113人が本棚に入れています
本棚に追加
/87ページ
 とにかく無事に父さんを回収することができたので、そのまま犬彦さんの待っている車のところまで連れていく(うっ、ほんとに重いな、父さんの荷物…漬物石でも入ってんの!?)そして後ろの座席やトランクにぎゅうぎゅうと荷物を詰めたら、俺たち三人は無事に自宅へと帰ってきたのでありました。  そこからはもう、父さんというゲストがうちに増えたので、完全に父さんのターン。  めんどくさいから簡単にまとめていくと、こんな感じ。  うちに着くとまず、父さんが寝起きする拠点となる和室へ案内しようとしているのに、それより先にリビングの床の上でさっそく荷解きを始める父さん。  そのクソでかいキャリーバッグの中から出てきたのは、ほとんどがおみやげだった。  いま父さんはイギリスに滞在中なので、イギリスで売ってるお菓子とか、Tシャツとか、謎の置物とか(ねえ、海外のおみやげで置物買ってくる人ってなんなの?)とにかく次々にいろんなものをドラえもん並みにわんさか出してくるので、うちのリビングの床の上はすぐに物でいっぱいになった。  犬彦さんがお茶の用意をしてくれているのに、父さんはひたすらおみやげの説明をすることに夢中。  それを延々と聞かさせる俺、しかしやがては俺から、犬彦さんへと絡むターゲットを代える父さん。  「これ、いいやつなんだよー、犬彦くん似合うと思って」とか言って、ネクタイとか、靴下とか、さらにはさっき俺に渡してきたのとおそろいのTシャツを犬彦さんへ押し付ける。(俺はともかく、犬彦さんに謎のキャラクターがプリントされてるTシャツあげるってどうなの…)  「ありがとうございます」と言って、普通に父さんからのおみやげを受け取る犬彦さん。  このときの犬彦さんの反応はただの社交辞令か、もしくは本当に犬彦さんは、父さんからもらった変Tシャツなど着るのだろうか、今後に乞うご期待だ、と思いながら俺は黙って二人の様子を眺めていた。  さんざんおみやげを床に広げた父さんは、ひとしきりそれをやってバッグの中身がかなりぺちゃんこになったところで、すかすかのバッグとともに、一度和室へ引っ込んだものの、すぐに俺と犬彦さんのいるリビングへ戻ってきて、それからずっと、寝るまでしゃべり倒したのだった。  父さんはもともと、そんなにおしゃべりな方じゃないんだけど、やっぱり久しぶりに日本へ帰ってきてテンションが上がったんだろう。  犬彦さんも、おしゃべりを自分から好むような人じゃないんだけど、この日は夜までずっと父さんと話をしていた。  話の内容は、仕事のこと、イギリスのこと、日本のこと、日々の生活のこと、そして俺のことだった。  二人が俺のいる前で、酒を飲みながら俺のことをずっと話しているのを(学校のこととか勉強のこと、日常生活、健康、その他諸々…)おかずを食べながらとなりで聞いているのは、変なかんじがした。  ちなみに、父さんと会うのは半年以上ぶりなんだけど、特にこれといった感慨深さみたいなものはない。  定期的に電話で会話して声も聞いているし、メールで写真を送ってきたりするから(休日にどっかのお城の前で撮った記念写真とか)久しぶり感とかもない。  ほんとただ、あ、父さん、っていうそれだけの感じ。  むこうはどう思っているのか知らないけど。  とにかく12月30日はこうして終わった。  すでにけっこう疲れた。  そして明日は大晦日。  ついに犬彦さんのバースデーパーティー決行の日である。  
/87ページ

最初のコメントを投稿しよう!