2 血の涙を流す絵画の謎

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   「千秋、なんか手についてない?」  僕に手をつかまれたことで、千秋もそのことに気づいたようだった。  顔をしかめて、千秋は自分の手を眺めた。  そして…。  「うっ!」  息を飲むような千秋の声。  次には、千秋にしてはめずらしい、うろたえたような声を上げた。  「な、なぎっ! オレ、どっか切ったのか!? 血が出ているのかっ、こんなに!?」  その千秋の声にびっくりして、僕は千秋の手をつかんだ自分の手と、そして千秋自身を注意深く見る。  しかし、自分の手を一目見ただけで、それがなんなのかはすぐに分かった  「なに騒いでいるの、ばっかみたい、ただ棚から落ちてきた絵の具が、手にひっかかっただけじゃないの」  僕の背後から、ぴょこっと顔をのぞかせたあおいが、一目見てすぐさまそう言った。  あおいの言うとおり、僕の手についているのは、鮮やかな濃い緑色の絵の具だった。  こんなド緑色の血なんか、千秋の正体がエイリアンでもないかぎり、ありえない。  いつもは千秋からからかわれることの多いあおいだが、ここぞとばかりに、千秋をこき下ろしている。  さっきまでの恐怖心はどこかへ飛んでいったのか、あおいは鼻高々といった笑顔を浮かべていた。  「本当か、なぎ、これはオレの血じゃないのか?」  しかし千秋は動揺しているのか、まだそんなことを言っている。  この独特なぬるりとした絵の具の肌触りが、千秋を混乱させているのだろうか?  それとも…あおいにだけ見えるという壁の血しぶきの跡みたいに、何か良くないものが、今度は千秋をだまそうとしているのか…?  
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