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「どうして家入くんはそう思うの?」
「ここまでの五十嵐くんの話を聞いていれば、自然と分かるよ。
五十嵐くんは、基本的に冷静で客観的な視線で物事を観察している、それが記者の視点ってやつなのかもしれないけど。
とにかく五十嵐くんは、不思議な出来事を、怪談で片付けようとはしていないことは確かだ。
五十嵐くんは、『謎』の仕組みが知りたいんだ、何故あのとき三人それぞれが個別に奇妙な体験をしたのか、そのトリックが気になって仕方ないんだね、…トリックだと思っているんでしょう?」
「家入くんて、本当に…」
相槌というよりは、感嘆みたいな感じの声色でそこまで言うと、五十嵐くんは一度黙り込んだ。
それで俺が、…ハッ! しまった! と思ったときにはもう遅くて、五十嵐くんはパッと満面のキラキラ笑顔を俺に向けると、超うれしそうに大きな声を上げた。
「本当に探偵なんだね! すごいや!」
「あ、いや、その…今のは、ちょっと思ったことを言ってみただけで…」
「すごい洞察力だ! すごいすごい! 『自己成就的予言』? すごい言葉を知ってるんだね、本当に探偵だったんだ!」
「いや、ちがう、ほんとちがう、今のはその…」
やめて、地元のマックで、探偵探偵連呼しないで、恥ずかしい、やめて、もう家に逃げ帰りたい…てか、こんなテンション高い五十嵐くん初めて見るんだけど…こわ…。
「じゃあもしかしてもう分かっちゃった? 今の僕の話を聞いて、もう家入くんには謎が解けちゃった!?」
「あ、ええっと…いや、まだなんとなくしか…」
「なんとなく!? それってつまりほとんどの謎は解けてるってことだよね!? すごい! 教えてよ家入くん! やっぱり僕の人を見抜く目は確かだった、家入くんはすごいよ! それで、あのときの奇妙な出来事は何だったの!?」
(ヒイィィ…あのおとなしい五十嵐くんが、グイグイ押してくる…こわいよぉぉ…!)
このときの五十嵐くんの期待に満ちた圧がすごすぎて、ついうっかり探偵的な発言をしてしまった自分にショックを受けていたこともあって俺は、軽いパニックに陥ってしまい、とにかく今の状況から逃れることしか考えられなくなってしまったせいで、苦し紛れにこんなことを言ってしまった。
「ああっ…待って! 憶測だけで軽々しく結論を話したりできないよ!
もうすこし考察する時間が欲しい、だから…ちょっとのあいだ待ってくれないかな!?」
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