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豚肉の生姜焼きにそなえつけるためのキャベツをザクザク千切りしながら、俺は考え続ける。
(とにかく、五十嵐くんから聞いた話をまとめて、俺が考えなきゃいけない『謎』について、くわしく考察し直そう。
ええと…たしか、『血の涙を流す絵画』にまつわる『謎』は大まかにして、3つあったんだっけ?
まず1つめは…五十嵐くんたち三人のなかで、真面目女子だけが感じた異変。
①壁に飛び散る血しぶきの跡みたいなシミ。
これは、五十嵐くんと岡本くんには分からなかった、真面目女子だけが主張する怪奇現象だ。
五十嵐くんが言うには、真面目女子はウソをついたりするような人じゃないらしいし、本当の本当に彼女だけがそれを見たんだとしたら、それはどういう仕掛けなんだ?
それから2つめ、これは岡本くんに起きた異変。
②岡本くんが、自分の手についた絵の具を異常に恐れたこと。
五十嵐くんほどじゃないにしても、俺も岡本くんがどんなやつかはだいたい知っている。
岡本くんは、ガチの明るいキャラで(下手したらアホ系キャラにも見えるときがある)自分で言うのも情けないけど俺みたいに、何かにやたら怖がるようなやつじゃない、むしろそういう対象に対しては開き直ってキレかかっていくようなタイプだ。
だから、いくらそのときの美術準備室の雰囲気が不気味だったとしても、五十嵐くんや真面目女子からも、一発でただの絵の具だって分かるものに、どうしてそれほど怯えたのか、俺も五十嵐くんも不思議なんだ。
そして3つめ、今度は五十嵐くんの身に起きた異変。
③五十嵐くんだけに見えた、血の涙。
五十嵐くんは確かに、例の肖像画が血の涙を流しているところを見た。
でも、三人のなかでそれを見たのは、五十嵐くんだけだった。
厳密に言うと、真面目女子も肖像画が涙らしきものを流しているのを見たけれど、彼女はそれを『血の涙』ではなく、『メロンパン色をした涙』だったと言う。
しかも岡本くんにいたっては、肖像画は涙など流していないと言って、怒ってしまった。
三人は、同じ場所で同じものを見ているはずなのに、まったく別の証言をしている。
これはどういうことなんだろう?
誰かが嘘をついているのか?
それとも、これらの不可思議な事象には、何かトリックが?)
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