3 安楽椅子探偵は、かくのごとく考察する

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 キャベツの千切りが終わった俺は、次にサラダ用のトマトを切り始める。  (トリック…それらの奇妙な出来事の原因は、すべて誰かが仕組んだトリックだったとして、なんのためにそんなことをする必要があるだろう?  あったとしても、そんな奇妙な事象を個別に起こすことは可能なのか?  三人それぞれに違った感覚を起こさせる、そんなことが…)  切ったトマトとわかめをお皿に盛り付けると、それを冷蔵庫へ戻して、次にれんこんの煮物の準備にとりかかる。  (俺の頭脳なんかじゃ、そのトリック(仮)がどんなものか、ちらりとも思いつくことは出来ない。  だけど、五十嵐くんたちが体験した奇妙な出来事が、怪談から派生した超常現象ではないことは確かだ。  そのことについては、俺も五十嵐くんも確信がある。  もし五十嵐くんが、それらの『謎』が超常現象だったと捉えているなら、そもそも俺のところになんて相談にこないだろうし、本質的に五十嵐くんはリアリストだ、それは今日ふたりだけで会話をしていてよくわかった、五十嵐くんは現実的に『謎』の解明を求めている。  俺は…この世には怪談なんて恐ろしいものはないってことを否定したいからこその超常現象否定派だし、何でもかんでも「これはおばけが起こした不思議現象だぁー!」なんて騒げるほどピュアじゃない、でもそれだけじゃなくて、忌々しいことだけど…あの感覚がするんだ、…この『謎』には何か理由がある、隠された原因がある、…そういう確信を含んだ感覚が、無視しようとしても、俺のなかの深い場所から浮かび上がってくるようにして囁くんだ)  鍋でれんこんを煮ながら、豚肉を炒める準備をする。  (五十嵐くんのあの目…真っ赤な色をしていた。  さすがにタイミングが悪すぎる、いくら五十嵐くんが冷静なリアリストだったとしても、さすがに気にしちゃうよね、自分の目が赤くなったのは『血の涙を流す絵画』の呪いか何かのせいじゃないかって思うのも…まあ分かるかも)  豚肉を食べやすいサイズに切っていく。  (目、か…)  
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