1 今年が終わるころに

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 一歩マックの店内に入ると、外の寒さから完全に分断され、あたたかい空調とあのマック独特のにおい、そして店員さんやお客の活気あるざわめきに包まれる。  さて、まずは何か頼もうと、俺と五十嵐くんは揃って注文カウンターへと向かう。  でも、さっきまで散々ファミレスで飲み食いしていたのもあって、二人とも軽めにしか選ばなかったんだけどね。  五十嵐くんはコーラ、俺はバニラシェイクとポテト。  せっかくマックに来たんだから、本当なら当然ハンバーガーも頼みたいところだったんだけど、晩御飯の前だし、ポテトだけでがまんすることにした。  (ポテトはさぁー、ポテトは食べたいんですよ、やっぱり)  そして、それぞれのアイテムを手に持って、空いていた窓際のカウンター席に座る。  んで、ちょっと落ち着いたところで、ゆっくりと五十嵐くんが話し始めたわけなんだけど…。  いや…俺はね、てっきり…なんか…こうして五十嵐くんが話し出そうとしている内容っていうのは、きっと、うちのクラスの何かに関係することなんじゃないかって、なんとなく考えていたわけなんですよ。  たとえばさ、気が合わないやつがいて困ってるから相談にのってほしいとか、あるいは、好きな女子に告ろうか悩んでるとかさ、そういう…なんていうのかな、ごく日常的な話題に直結している内容なんだと思っていたんですよ、…それが、なんなのさ『血の涙を流す絵画』って!?  いや、その前に…俺が探偵うんぬんって話を、なんで五十嵐くんが知ってるわけ!?  クラスの誰にも話していない…俺の暗黒歴史…なんで五十嵐くんが!?  「ね、ねぇ、五十嵐くん、俺が名探偵って…なんでそんなこと、そ、そんなことあるわけないじゃんか、誰がそんなおかしなこと五十嵐くんに言ったの?」  犬彦さんに見られたら一発でバレてしまう愛想笑いを浮かべながら、どこかたどたどしくなりつつも俺がそう言ってごまかしてみたものの、五十嵐くんは笑顔を返しながらあっさりとこう返事する。  「うん、さっき家入くんがいなかったときに電話をかけてきた人が、そう教えてくれたんだよ。  名探偵なワトソンである家入くんの相棒の、超名探偵なホームズっていう人が」  ぎゃああああぁぁああぁああぁぁぁぁぁっ!!!  無邪気な表情で俺を見ている五十嵐くんに、内心の俺の動揺っぷりが悟られないよう、俺は、犬彦さんばりの無表情を意識しながらも、どうしても慌てた手つきになりつつ急いでポケットから自分のスマホを取り出した。  そして着信履歴を速やかにチェックする。  …な、なんということだ…。  こんなときに限って、あ…茜さんから着信があっただなんて…!!  
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