花言葉はお好きですか

7/12

18人が本棚に入れています
本棚に追加
/57ページ
「えっと、」  まい子は笑いをこらえながら、ノブモトの背をそっとさすった。 「私は嬉しかったですよ」 「……」 「もう、ノブモトさん、そんな落ち込まないでください」  結局、しくじったノブモトとそれを励ます彼女の図に落ち着くのである。 「怒ってもあきれてもいませんよ」 「本当ですか?」  ノブモトが、手のすき間から目をのぞかせた。 「本当です」 「でも口元が笑ってますよ……」 「だからです」 とまい子は言った。 「怒ったりあきれてたら、笑わないでしょう?」 「そうでしょうけど」 「なんだかすごく……愛おしいです」  まい子がバラに目を落として、言った。さすがに彼の目を見ながらは、照れて言えなかったらしい。 「ね、ノブモトさん。本当はどんな意味を持たせるつもりだったんですか?」 「え?」 「まさか、本当にごめんなさいじゃないでしょう?」 「違います、違います」  ノブモトはあわてて、両手を振った。 「本当は、その」  チラッと、本を見る。 「12本のつもりでした。それが何でか15本と勘違いして――何ででしょうね」  そんなこと聞かれても、誰もわからない。 「まい子さん、ちょっと」  言うなり、ノブモトは彼女の手からバラを取り上げてしまった。 「えっ、待って、持って行かないでください――本数なんて気にしませんから」  取られた彼女の顔が、悲しそうにしている。そちらを見ないように、ノブモトは手元に集中した。 「別にこれを捨てようって言うんじゃありませんよ。せっかくのお花ですし、無駄にするのは忍びないですから」  数本だけ抜き取り、もう1つ花束を作る。リボンと紙がどこから出てきたのかは、まい子にはわからなかった。 「本当は、こう言うことじゃないんでしょうけど。どうか、これで勘弁して頂けないでしょうか」  ノブモトはまい子に向き直った。 「3本と、12本に分けました。これで――私の気持ちをあなたに伝えられます」  まい子は、花言葉を探した。  3本は『あなたを愛しています』。  12本は『私と付き合って下さい』。
/57ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加