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「それからですね」
とノブモトは続けた。
「水曜日以外にも会いに来たい気持ちはあるんですが、本業の方がちょっと――」
「それはもう平気です」
まい子がふふっと笑った。
「もう寂しくありません。だって――あなたが愛してるって言ってくれたから」
「まい子さん……」
彼女の喜びようと、こんなセリフをさらりと言ってしまう度胸に心打たれてしまったノブモトである。
「離れていても、きっと私のことを想ってくれていると思えば……大丈夫です。次の水曜を楽しみに、私も頑張れます」
「私も同じですよ」
とノブモトは言った。
「私だって、まい子さんに会える水曜が楽しみで仕方ないんですから」
「そうなんですか? フフフ……じゃあ、私たち一緒ですね」
「ええ、一緒です」
うなずいて、花束を持つ彼女の手に、そっと手のひらを重ねた。
「夕暮れには、次の水曜の話をしましょう」
「えっ?」
「したいこと、話したいこと、何でもいいです。そうしたら――夕暮れも嫌いじゃなくなるでしょう」
「ノブモトさん……」
「あなたには、嫌いなことじゃなくて、好きなことに囲まれて生きていてほしいんです。だから――」
ぽすん、と肩に落ちた感触があった。
「ノブモトさん、ありがとう……」
胸に寄せた彼女の頭に、無意識に手が伸びた。花束をつぶさないように、まい子をそっと抱く。
「……好きな人を想うのは、当たり前のことですよ」
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