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Ⅴ アンドヴァラナウトの呪い
「フゥ……終わったか。予想外に危ねえ橋を渡っちまったぜ……ご苦労だったな、ヴォラク。俺様が助けてやったおかげとはいえ、あのファフニルを倒してついにレヌーズの黄金を手に入れることができたぜ。本来の契約じゃ無償で使役するつもりだったが、ご褒美にこの黄金をおまえにも分けてやるぜ」
辺りが静けさを取り戻すと、俺はぬかるんだ川底の地面から起き上がり、龍の背に戻った美少年天使に愉悦の笑みを浮かべながらそう告げる。
「フン! 余計な真似しやがって。おまえの助けなんてなくても、ワームごとき余裕だったのによう……ま、せっかくだから、くれるもんは遠慮なくもらっとくけどな……」
今度こそ黄金を自分のものとし、上機嫌にそんな太っ腹なこと言ってやる俺だったが、小生意気にも可愛らしい少年の顔をした天使のような悪魔はドラゴンの上にふんぞり返って悪態を吐く。
「……と言いたいところだが。んな縁起悪いもんほしかねえぜ……なあ、悪魔の俺が言うのもなんだけどよ。あんましその黄金には手を出さねえほうがいいぜ? 特にその指輪はやめといた方がいい」
だが、なぜかヴォラクは幼顔の眉間に皺を寄せてると、どういう了見か悪魔とも思えねえような説教を俺に垂れる。
「なんだ? 悪魔様もレヌーズの黄金の呪いが怖いってか? フン! 大丈夫だよ。これだけの金がありゃあ一生遊んで暮らせる。それにこの指輪は勝手に財産を増やしてくれるんだろ? 宝探し家業はこれっきりにして、これからはのんびり静かに田舎暮らしでもするつもりだ。そんでも身を滅ぼすような危険があると思うか? これまでのやつらは要らぬ欲をかいたからいけねえのさ……お、ぴったりだな」
俺の身を気遣ってくれたのか? 悪魔のくせしてなんとも親切な野郎だが、んなもん、それこそ余計なお世話だ。
身を滅ぼした諸先輩方と違い、黄金の呪いから逃れるためのプランもちゃんと考えていた俺は、悪魔の忠告を鼻で笑うとさっそく黄金の指輪〝アンドヴァラナウト〟を中指にはめてみた。
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