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第6話 サキュバス達の願い
国境付近では隣国が軍を展開している。その度に静子が軍隊の鎧と武器を破壊する魔術式で撃退している。今回の進軍は武司達がこの世界に来てから6回目だ。何回撃退しても懲りずに進軍してくる。彼等の情報ではウッホ王国は内政が乱れていて簡単に攻略できる国のはずだった。しかし彼らは勇者の存在を知らない。そして軍備が強化されていることも。
「今回はこの薬を使って欲しいんだ」
同行した武司がエルフに作ってもらった催淫剤を静子に渡した。彼女はその薬を魔術式で散布する。すると兵士たちは一物を大きくして男同士で掘りあい始めた。
「お前の発想は怖いよ」
誠が不快感を露わにして武司を見つめる。
「そんなに褒められても」
「いや、軽蔑しているよ。でも、武司が居なければ俺達は奴隷だったからな。それには感謝している」
誠はそう言いながらその場を離れる。後に残ったのは剣聖と軍師、兵士だけだ。
「武司陛下、敵を攻めないのですか?」
「うん、男同士の宴を見たいからね。それに彼等だって家族は居ると思うんだ。命まで奪う必要は無いよ」
「それにしては兵器は強力ですが」
「最悪の事態を踏まえてだよ。普段は戦意喪失させて撤退させればいいんだ。そのうち隣国の国力が落ちて簡単に侵略できるようになるからね」
「そこまで考えているんですね」
「あぁ、それにこの国もまだ地盤が固まっていないからね。遠征する時期ではないよ」
その言葉を聞きながら剣聖は少し不満そうにする。彼は剣士だ。戦いたいと思うのだろう。
「少しだったら暴れてきても良いよ。奥の兵士は無傷だからね。でも絶対に生きて帰って来い。これは命令だ」
その言葉に剣聖は嬉しそうに単身で出陣する。そして司令官たちの衣服や武器を破壊すると意気揚々と戻って来た。
「殺さなかったんだな」
「武司陛下の殺さずの戦いを真似してみました。なかなか難しいものですね」
「まあ、僕は誠と静子に汚れて欲しくないんだ。汚れるのは僕だけで良い」
「そんな武司陛下だから皆に慕われるのでしょう」
そう言うと2人で顔を見合わせ思わず笑う。そこには戦場だという事を忘れさせる雰囲気が漂っていた。
城下に戻るとサキュバスから面会依頼の嘆願書が届けられていた。武司は単身でサキュバスに会う。
「初めまして陛下。この度はお願いがありまして参りました」
「お願い?」
「はい、この国にはサキュバスが3000人居ます。そのうち2000人を従軍させて欲しいのです」
「それは兵士の精気を吸う為ですか?それは構いませんが色街は大丈夫なんですか?」
「色街は各都市に100人居れば問題ありません。私たちは兵士として雇って欲しいのです。勿論、兵士の皆さんの性処理も承ります」
「解らないな。何故、兵士になりたいのですか?」
「陛下の戦い方を見て精気を集めるのに兵士が一番向いているからですよ」
その言葉で納得する武司。そして彼は誠と静子、ゲルドとアイリーンに相談する。
「悪い話ではないでしょう。サキュバスは体を刃に変えて戦えますし空も飛べます。伝令役や偵察にもその力を発揮できるでしょう」
アイリーンの言葉で武司はサキュバス2000人を軍隊に加える。今、各種族の兵士が2000人ずつ居る。彼女らを入れれば総勢18000人の兵力になるのだ。
「これで国境の警備は強化されるな。今後、サキュバスに催淫剤を撒いてもらおう」
武司はそう言いながらニヤリと笑う。
「敵の兵士は一生物のトラウマだな」
誠はそう言いながら苦笑いを浮かべた。
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