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エピローグ
* * *
「槊葉!」
低く艶やかな声に意識を引き戻される。ゆっくりまぶたを上げると、さっきより何倍も大人びた顔が目の前にあった。どうやら膝枕をされているらしい。
「大輔……?」
ぼんやりしたまま夢の中と同じように呼ぶと、安藤が切なげにほほ笑んだ。
「やっと思い出したな、槊葉」
そう言いながら、槊葉の目の前に太字で顔を描かれたビー玉くんを差し出す。記憶の中のそれよりいくらかくたびれていた。
「え……なんでこれ。あれは夢じゃ……」
「夢じゃない。十七年前に初めて会った時から、俺はずっと槊葉に会えるのを待ってたんだから」
そんなまさか、あれが現実だったなんて。驚く槊葉の額に安藤がキスを落とす。
「SAKURAドロップスは失恋して次の恋へ進む歌だよ。君の恋が終わるまでちゃんと待ってた俺に、順番が回ってきてもいいと思わない?」
いたずらな瞳が至近距離で熱を増す。安藤のキザったらしさは自分にだけ向けられたものなのだと、ようやく思い至った。
「ばあか」
派手にばらまいた色とりどりのドロップに囲まれながら、槊葉の中で新しい恋が始まろうとしていた。
【おわり】
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