タイムスリップ!? 01

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タイムスリップ!? 01

*    コツン。硬いものが頬にあたる。 うっすら開かれた瞳に鮮やかな透明の球体が映り込んだ。 (……ア、メ?) 「すいません! 大丈夫ですか?」  無数の丸い玉と一緒に転がっている槊葉を誰かがおそるおそるのぞき込む。  幼さの残る不安定なテノールは甘ったるく、妙な既視感を覚えた。 (あ……モブ?)  ゆっくり視線を上げると、見知らぬ学生がばらまいたビー玉をあわあわと追いかけている。 「思い切りひっくり返しちゃってごめん! どこか打ったりとか……」 「大丈夫」  遮るように答えて槊葉は上体を起こした。  辺りを見回しても他に人の気配はない。それどころか思い切りぶちまけたアメ玉が見当たらず、代わりに安藤に似た学生とビー玉が転がっていた。 (あんなに追いかけてきたくせになんなんだよっ!)  倒れた自分を放ったらかして姿を消した男に身勝手な怒りが湧き上がる。 「安藤のバカ!」 「ごめん!」  地面を殴って怒りをあらわにする槊葉に、なぜか目の前の少年が申し訳なさそうに謝った。 いやおまえのことじゃ……と言いかけて飲み込む。 彼の胸ポケットには『安藤』と書かれた名札が付いていた。 「おまえ安藤っていうの?」 「そうだけど……」  さきほども思ったが、顔といい声といい槊葉のよく知るあの男と瓜二つだ。まさか。 「もしかして安藤大輔の弟かなんか?」 「え、安藤大輔は俺だけど……」  訝しむように凝視され、槊葉はまたしても目を瞬いた。 「マ!? お、同じ名前の親戚がいたりとか……」 「いない」 「……ドッペルゲンガーかよ」  混乱する槊葉をよそにドッペルゲンガーは散らばったビー玉の回収を再開した。背中越しに会話は続く。 「なんで俺の名前を……?」 「たまたま! それに名札ついてんじゃん。個人情報の垂れ流しは危険ですよー」 「名札なんて誰でもつけてるだろ」  今どきそんなもん誰もつけねーし! と心の中で叫ぶと、安藤その二がたった今拾ったばかりの四角い塊を差し出した。 「これ落とした?」 「あ! 俺のスマホ!」  槊葉は慌ててそれを引っつかんだ。草の上に転がったおかげで派手にこけたのに無傷だ。 「変わった形のデジカメだな」 「いやスマホだろ」  無表情でボケんな! と慣れもしない突っ込みを入れると、安藤その二がきょとんとした顔で槊葉を見やる。
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