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傘を運ぶのはエンキ翁の仕事だった。少年――アンナはもっぱらその手伝いで、彼の仕事を籠の横に立って見ていた。
「しかし、この子はいつ見ても細いな。ちゃんと食わせているのだろうな」
この貴族の若い女主人は、アンナを見るなりそう言った。
「食べてるよ。おかげさまで」
エンキ翁がなにか言う前に、アンナは籠の横から口を挟んだ。
「うまいことを言うではないか。ほら、こっちへ来い、掌を出せ」
アンナは商品の入っていた籠からゆっくり離れると、おずおずと手を出した。
「飴ちゃんだ。棒が喉につっかえるといかんから、歩きながら食べてはいかんぞ」
「……わかりました。ありがとうございます」
「うむ、ちゃんと礼も言えるのか。えらいぞ」
帰り道、棒つきの飴を眺めながら、彼はエンキ翁に聞いた。
「ねえじいさん、飴って何」
「貴族さんの間で流行っている、嗜好品らしい。舐めると甘いそうだ」
「ふーん」
「おまえのほうが詳しいと思ったがな」
「初めて知ったよ」
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