エアの技術

3/7
前へ
/7ページ
次へ
 傘を運ぶのはエンキ翁の仕事だった。少年――アンナはもっぱらその手伝いで、彼の仕事を籠の横に立って見ていた。 「しかし、この子はいつ見ても細いな。ちゃんと食わせているのだろうな」  この貴族の若い女主人は、アンナを見るなりそう言った。 「食べてるよ。おかげさまで」  エンキ翁がなにか言う前に、アンナは籠の横から口を挟んだ。 「うまいことを言うではないか。ほら、こっちへ来い、掌を出せ」  アンナは商品の入っていた籠からゆっくり離れると、おずおずと手を出した。 「飴ちゃんだ。棒が喉につっかえるといかんから、歩きながら食べてはいかんぞ」 「……わかりました。ありがとうございます」 「うむ、ちゃんと礼も言えるのか。えらいぞ」  帰り道、棒つきの飴を眺めながら、彼はエンキ翁に聞いた。 「ねえじいさん、飴って何」 「貴族さんの間で流行っている、嗜好品らしい。舐めると甘いそうだ」 「ふーん」 「おまえのほうが詳しいと思ったがな」 「初めて知ったよ」
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加