奇跡のイリュージョン

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 その翌日から、二人はコンビのマジシャンとして活動を始めた。最初こそ鳴かず飛ばずであったが、しだいにその既成概念にとらわれないマジックの数々が評判となり、人気を集めるようになっていった。  大きな会場での仕事も増えていき、とうとうテレビ取材の入るショーの依頼が舞い込んできた。 「俺たちもついにテレビに進出か。なんとか成功させないとな」 「ああ、これは貴重なチャンスだ。いいショーにしよう」  当日、二人は入念に組んできたプログラムのとおり、素晴らしいショーを披露していった。観客たちはその1つひとつに驚きの声を上げ、会場は大いに沸いた。  そして、いよいよショーも大詰めとなり、大規模な装置が会場に運ばれた。観客たちがそれに目を奪われていると、マジシャンはマイクを持って高らかに言った。 「さて、これから私はこの水槽の中に…」  バシャーン。  マジシャンが言い終わる間もなく、会場にすごい音が響き渡った。観客もコンビの男も驚いてステージの方を見ると、置かれた水槽の中にはスーツを着た1人の女が入っていた。 「皆さんご覧になりましたか? 空から突然、女が現れました。まさに奇跡のイリュージョンです!」  マジシャンがそう叫ぶと、会場は割れんばかりの拍手に包まれた。
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