命の色

5/15
56人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
「手術後に起きるかもしれない症状についてお話しましたが、奥様は水頭症にかかっています。脳内で出血した血液は、脳脊髄液と呼ばれる脳の中の水を汚します。その為。脳が腫れて頭蓋骨内面に押しつけられてしまい、非常な痛みを伴うと共に、障害が出る恐れもあります」  大悟は写真の片方の脳が肥大して、頭蓋骨の中の空間が少なくなっているのを見て、恐ろしくなった。  縋るように斎賀医師を見ると、医師は大悟に今後の処置の仕方を説明した。 「汚れた脳脊髄水液を骨髄から排出します。代わりに点滴で水分を補い、脳内の液をきれいにしていくのですが、汚れた脳脊髄液や尿などの排水量を常に測って、脳内の水分が減り過ぎて脳を傷つけないようにチェックします。口からもどんどん水分を摂ってもらいますが、それらの量を全て記録してください」    美咲は背中の腰椎の第三から四の骨と骨の間に穿刺針を刺され、それに取り付けられて長く垂れ下がったカテーテルの端が、ベッドの脇に吊り下げられた廃液用の袋に差し込まれた。  脳脊髄液と尿は別の管を通って水量を測るメモリのついた廃液用の袋に溜められることになる。  脳脊髄液の排出速度は管の途中についているカプセルのような所で落ち具合を見て調整された。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!