命の色

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「髄液は弱アルカリ性の無色透明の液体なんです」  斎賀医師がカテーテルから出てきた髄液を確認しながら、大悟に説明した。大悟が見た脳脊髄液は真っ赤に染まっていた。  外からは見えない美咲の傷が、真っ赤な痛みを伴って、大悟の目を刺した。   本当に頭の中で出血しているんだ! 病名を聞いて頭では理解していたつもりなのに、目の前に現実を突きつけられて、大悟の指先が震えた。  妻は助かるのだろうか? 涙で潤んだ目を医師に向けると、2、3日様子を見ましょうと言われた。  2、3日経っても袋に溜まる液は赤かった。尿と混じってブラッドオレンジのような赤オレンジ色になった体液は、手袋をはめた看護師によって大きなビーカーに移される。腰に刺した管から細菌が発生していないか廃液の検査をするためだ。  医師もその色をチェックして唇を噛んでいる。 「もう一日様子を見ましょう。出血の1週間から、10日ほどすると、血を勢いよく噴出した反動で血管が縮みます。その時に細い血管が詰まり脳梗塞を起こす可能性があります。この収縮は避けられないので、脳梗塞が起こる場所によっては、障害が残ります」
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