電話の声

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瞬間、今まで弱みを握られ飽きるまでいじり倒された過去が蘇る。 反対に、昨日の記憶は蘇らない。 あれ、もしかして、 場合によると、 ひょっとしたらわたし、 もっともやばい敵に、しかも最大の失態を晒してしまったりしてるんではないだろうか…。 冷や汗が止まらない奈津子だが、 ひとまず朝ごはんを用意しつつ、恐る恐る謝罪を送信する。 『昨日はすみません』 『夜中に相手してもらったみたいで…』 送った後にもう一度、記憶を掘り返す。 終電間際に解散した後、誠から来た連絡に返そうとしたが、 思うように打てなくて、電話をかけた方が早いな・・・と考えていたような気がする。 だめだ、やっぱりそれ以上は思い出せない。 ピコンと通知がなる。 『覚えてないんか』 誠の返信がやけに早い。 『覚えてないです…』 胃が痛いのは残っている酒のせいだろうか。 『昨日な、いきなり電話かけてくるし、なんかやたら口悪かったで』 「うそやん…」 やっぱりやってしまっていたんだな、これは。 奈津子は頭を抱えた。 続けて通知がなる。 『ほんまにうっとおしい、からみ酒やった』 『すみません…』 お腹だけじゃなくて、頭も痛くなってきた。 『延々福娘とどうなったんっておんなじ話聞いてきてさ、しつこいし、口悪すぎてちょっとぶっ飛ばしそうになった」 『本当に本当にごめんなさい』 その後も次々と出てくる私の所業 ゼミの最中も通知が鳴るたびに心が痛んだ。 誠はクレイジーな奴は好きだが、おそらく、だらしない奴はあまり好きじゃない。 男女構わず浮気をする人は大嫌いだし、奈津子も運動が続かない時はたまに呆れられる。 次々と送られてくる醜態を見る限り、 これはもう、やらかしたというレベルではなく、確実にだらしない女の烙印を押されてしまっただろう。 …嫌われたかもしれない。 初めて誠と同じシフトの日に、バイトへ行きたくないと思った。
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