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昨日の夜中までかかって書き上げた履歴書のボールペンのインクを乾かすために、朝までリビングの机に置いていたら、父が目玉焼きの黄身をこぼしたこと
企業研究をしようとした時間を使って、時間のギリギリまで新しい紙に書き直していたら化粧をする時間がなくなったこと
せめて会場には余裕を持ってつくように、走って駅に向かっていたのに、カバンから財布を落として、拾いに戻ったら電車が目の前で行ってしまっていたこと
ギリギリの時間に到着できて、駅から走って、そのまま面接会場に駆け込んだら、面接が始まって十分後、「入った時から気になっていたけど、ストッキングすごい伝線してるね」と笑われて見下ろすと膝から足首まで大きく裂けてしまっていたこと
その瞬間、頭が真っ白になって、そのあとのことは覚えていないこと
「何言ったか覚えてないけど、帰り際におねえさんに困った顔で見送られた。絶対落ちた。ほんで今、別の会社に落とされた・・・以上です。」
誠は口を二、三回開けたり閉じたりして言葉を選ぶ。
「・・・奈津子っていつも真面目で一生懸命やのに、ほんまに間が悪いよな」
「褒めてる?」
「哀れんでる、大変そー」
くそう、他人事だと思って。
誠は同い年だが、留学をしていたので、就職は来年だ。
気楽でいいなと思っていたら、目の前に皿が置かれた。
「さっき練習で入れたラテと、つまみ食い用のフィナンシェ焼きすぎたからあげる。五分なら遅れて入ってもいいよ。」
「君は神様か、店長か。」
「違うよ、飼育員」
ちっ。
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