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二回、好きになった友達
「また、お祈りメールや・・・」
大学四年の八木奈津子はため息をついた。
5月、就職活動の真っ只中、奈津子は面接終わりに、バイト先のカフェでシフトまでの時間を潰していてた。
同僚に頼んだコーヒーが届いて、口をつけながらメールを確認した時、一番最初に連絡が来たのは、先週受けた会社の不採用通知だった。
3回読み返した後、黙ってスマホをしまう。
今日はついてない・・・今日もか。
「はあああああ」
「他のお客様の迷惑になるので、店内で不審な動きはやめてください」
考えるのが嫌になって、ため息と一緒に頭をカウンターに打ち付けると、カウンターの向こうから同僚の菅田誠が声をかけてきた。
店に私の他に客はいないから、暇を持て余しているのだろう。
大阪随一の繁華街ミナミでしかも道頓堀のすぐそばなのに、この店はなんでいつも暇なんだろう・・・・と思いながら、誠に「うちだけやん、客」と小さく返す。
筋肉質でガタイのいい誠が黙々とカップを並べている姿は、クラシカルな雰囲気の店内とあっていない。
なんだか、昔読んだ漫画に出ていた、カフェのマスターをしているスキンヘッドの殺し屋みたいだなぁと、さっき駅で見た映画化のポスターを思い出して重ね合わせてみる。
自分が奈津子の脳内で殺し屋にされているとは知らずに、誠は「なんかあったん?」と先ほどのツッコミを無視して聞いてくる。
「また落ちました」
突っ伏したまま顔を上げずに答える。
「それだけやなくて、いろいろポンコツが重なって自分が嫌になってる」
そして、奈津子はポツポツと今朝あったことを話し出した。
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