あおい、あおい、空だから。

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あおい、あおい、空だから。

◇ 最寄り駅から電車に乗って東に三駅行けば市街地、西に一駅行けば在郷。わたしの住む町は、西の田舎町には一線を引けるけれど、住宅地ばかりが増えて人が多いというだけの、中途半端な発展をしていた。 山も川も海もある。臨海道路を脇道に逸れたら途端に自動車よりも人の通りが多くなるような、生活していく上で不便はないけれど、休日には行き場がない退屈な町だ。 通う高校の偏差値はそれほど高くないし、部活動もそこまで盛んでないから、休日に退屈を持て余す人は多い。そこで、毎週とは言わないけれど休日になると街に出て遊ぶ集まりができている。 1年生のときにもこういう集まりはあったけれど、積極的に参加することはなかった。一度目は断って、二度食い下がるようなら渋々参加をするというような感じで、そんな態度でいたら誘われることもなくなった。 2年生のクラスメイトは大抵と馬が合う。目に見えないカーストのようなものが緩く、どこにいて誰と話していても居心地が良いからだろう。週末に集まるメンバーのなかに、わたしも居座るようになっていた。 窓側から二列目、前から三番目の席に頬杖をついて、教卓の周りに集まるクラスメイト達を眺める。耳だけを傾けて、彼らの話を聞いていた。 時間も集合場所もいつも通り。市街地の主要駅を出てすぐのコンビニ横に屯していたら、自然と人が集まる。 話が終わると、人のかたまりが解けていく。仲のいい友人に参加の有無を聞かれて、当然縦に首を振った。 ふたつ年上の兄は、休みの日はどこにも出かけない。外に出歩いたら休みにならない、というスタンスで出不精をこじらせているのだけれど、わたしは正反対。 休みの日こそ、家の外のものを吸収するべきだと思っている。有意義な時を過ごしたい。時間は有限であることは、あんまり認めたくないけれど、真実だから。 それに、家にいて兄の使い走りにされるくらいなら、街に遊びに出かけた方がいい。 いかに安く時間を潰すか、を掲げた集団に身を置いておくのは悪くないし、実際千円以下で充実した週末を得られるのは得をしている気分だった。 「原井は? どうするー?」 机に手をついて、わたしの顔の前に乗り出した友人が窓側の席の彼に声をかける。 数学の教科書を立てかけて顔を伏せているけれど、先程から何度も身じろいでいるし、頭頂部は日射しから庇えていなかった。おろしたブラインドの隙間から射す光の筋が、のそりと首を擡げる彼の白い顔にボーダー柄をあしらう。
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