どうしますか?

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19時。オフィスビルから程近いカフェバーを貸し切って営業一課の送別会が行われた。 4月から営業一課を離れるのは遠野課長と営業2名、そして退職する事になっている私だ。営業はそれぞれ昇進して地方の支社で営業主任を務める事になっていた。 何人もの営業やスタッフが『お疲れ様でした』とビールを注ぎに来てくれた。 酒豪の私は貰ったビールを全て飲み干し、途中からは『ビール飽きたんで梅酒でもいいですか?』と水割りで乾杯するようになった。 何人かに『水無月って酒豪だったんだ』と驚かれたが、営業二課時代の飲み会で私の素性を知っていた小早川くんは『こいつザルですよ』と笑っていた。 「1年間お疲れ様。そしておめでとう」 空いていた私の向かいの席に座り、小早川くんがビールのグラスを持ち上げる。私も持っていた水割りのグラスを差し出し『お世話になりました』と乾杯をした。 「おめでとうの意味はちょっとよく分からないけど」 「本当に誤魔化すのが得意だよな」 「んー何の話かなぁ?」 「莉音は……」 そう言いかけて小早川くんが『やべっ』と慌てて口を閉ざした。私は取り皿に残っていたフライドポテトを口に運び、『何よ』と問い掛けた。 「さっき遠野課長の所に挨拶しに行ったんだけどさ、癖で『莉音』って言っちゃったんだよ。すっげー睨まれて『その呼び方は止めてくれる?』って言われてさ、いやいや嫉妬深いね。気を付けてよ」 「ねぇずっと聞きたかったんだけど、なんで小早川くんは私の事を『莉音』って呼んでいたの?名前が気に入ったからって言ってたけど、この名前の何がどうよかったのかなって気になってて」 「あー怒らないでね?奥さん……詩音と名前が似ていたから、それだけ」 「……お前、最低だな!」 小早川くんが私を気安く『莉音』と呼んでいた理由。それは当時まだ恋人で、今は彼の奥さんになった詩音さんと名前が似ていたからだった。 これを片思いの時に聞いていたら……私は間違いなくショックで立ち直れなかっただろう。今だからこそ笑い話にできる事だった。 「まぁまぁ、そう苛々すんなよ。何飲む?水割り?」 「もうこれも飽きたから、たまにはカクテルにしてみようかな」 「莉音にカクテルって似合わなさすぎだろ」 小早川くんがメニューを探す為に席を立つ。彼と入れ替わるように誰かがこちらのテーブルに近付いてきた。
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