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「この写真に写ってる男の子が誰なのか、分かる?」
三樹は自分の生徒手帳に隠し持っていた写真を見せた。
「誰もなにも…これ5年前の俺じゃねぇか!」
「………ええっ、そうだったの!」
「なんだ、知らなかったのか?俺は中学上がってお前を最初見たときにすぐに思い出したよ。」
「ええっ…うぅ…恥ずかしいよぉ…」
三樹は自分の初恋の相手が今目の前にいることを知って、数歩だけ後ろに下がった。
「なんでお前が恥ずかしがる必要があるんだよ!俺だって恥ずかしくないっていったら嘘になるけど、顔赤くするほどじゃねえから!」
「えっと…つまりあの日アタシが惚れた男の子は蓮で、蓮はその事を知ってたってこと?」
「そうなるな…で、何が言いたいんだ?」
「おっ、お礼…したいの。」
三樹は蓮に黒地に豹の箔押ペイントが入ったハンカチを渡した。
そのハンカチはかつて喧嘩に巻き込まれてケガをしてしまった三樹に対して蓮が使って止血したハンカチだった。
「このハンカチ…まだ持ってたのかよ…」
「だって、いつかはあの子が現れるかもって思ったから!」
蓮は少し恥ずかしそうに笑った。
「それはお前が持ってろ。俺が持ってたってしょうがない。お前が特別な思い出があるからって残したやつをもらうわけにはいかねぇよ。」
「そ、そうよね!じゃあこれはアタシがもらっておいてあげる。」
…アタシの初恋相手が、アタシとさっきまですごく喧嘩してたヤツだったなんて、ちょっと意外。だけど、なんだかんだ優しいのは本当みたいね。
「ほら、背中乗れよ。足腫れてるし、雨降って地面あれだからさ…大丈夫、俺は平気だから。」
「じゃあ、お言葉に甘えちゃおうかしら!よろしくね、蓮くん。」
三樹は蓮の背中に勢いよく飛びついた。その衝撃で蓮は少しだけ前に倒れかけたが、なんとか踏ん張った。
「んじゃ、コテージに戻るぞ。しっかり掴まってろよ。」
「うん!…あ、チェックポイントはどうするの?」
「オリエンテーリング中止になったんだからいいだろ、体も大分冷えてきてるから急ぐぞ。」
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