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蓮はそのままコテージに向けてゆっくりと歩き始めた。傘はというと、三樹が乗りながらさしてくれているため、大丈夫だった。
―コテージ―
新太と二菜は二人が遅すぎることにしびれを切らし、先生やクラスメイトの目を盗んでその隙にこっそりコテージを抜け、オリエンテーリングのコースへ向かった。
―山道―
…なんでこんなにドキドキしてるのかな。こんなヤツなんかに、ときめいたりなんてしないでよ、アタシ。
「三樹…あんまくっつかれるとバランス取りにくいんだけど。」
「そういう蓮だって、もっと早歩きできないの?」
「この状況この状態でできるヤツがいるか、バカ!万が一スピード上げて俺が転べばお前のケガがもっと酷くなることくらい予想つくだろ。」
(蓮も三樹のことを大切に思ってる。だけど、素直になれなくて隠してるんだと思う。本当はどう思ってるのか、三樹の口から聞いてみなよ。)
三樹はふと昨晩に二菜から言われたことを思い出した。
「あのさ…蓮くんって、アタシのことどう思ってるの?」
「直球な質問どうも。悪いけど、俺はまだお前ら女を許しきれないかもしれない。けど、少なくともお前らから好きになっていけば、そのうち他の女とも縒りを戻せるようになるかもな。」
「そういうことを聞きたいんじゃないの!アタシのことはどうなのって聞きたいの!」
三樹は蓮の耳を強く引っ張って怒った。
「今言わなくてもいいだろ!俺は今お前を運ぶことで忙しいからさ!」
…ガクン
なっ、なんだ…急に視界が…なんで、こんな…ことに…
蓮は少しずつ限界が近づいていた。というのも割りと長いこと雨に打たれていたことで既に具合が悪くなっていたにも関わらず、無理して三樹を背負ったことでより身体に負荷をかけていたからである。
それでも蓮はしっかりと最後まで三樹を安全に連れ帰りたい一心で歩き続けた。
―その後―
「あれ、蓮だ…しかも三樹背負ってるよ!」
「ホントだ…でも、蓮が今にも倒れそうな気が…」
蓮は新太の姿が見えたことでホッとしたが、それが仇となり、三樹の安全を確保しながら、崩れ落ちるように倒れてしまった。
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