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19 5年越しの告白・後編
これは、三樹が足を滑らせて落ちた後、蓮が見つけるまでの話である。
―5年前―
「ふぅー…疲れたな、新太!」
「うん…でも、今日の勉強難しかったから、これくらいやっといて正解だったと思うな。」
「へへっ、新太はえらいなぁ…お兄ちゃんとは大違いだな!」
「…ねぇ、蓮。あれって、喧嘩かな?」
蓮と新太は事前に約束していた場所に向かう途中、数人の男女が喧嘩しているところを見つけた。
「ここはおれさまたちが先にとってたんだ!お前ら女はみんな教室でおままごとでもやってろ!」
「「そーだ!そーだ!」」
「先にとったですって!?違うわ、アンタたちが横取りしてきたんじゃない!」
ツインテールでツンとした瞳を持つ少女こそ、当時の三樹だった。
三樹は当時から弱いものいじめされる子たちを守る側の立場にいた。
「お前、女の癖になまいきだぁ!お前ら、こいつやっつけちまえー!」
「「おーっ!」」
あっという間に三樹は蹴られたり殴られたりして、泣き出してしまった。
「さっさと帰れよ!」「嫌だ!」
「このおれさまに逆らったなぁ…」
喧嘩の主犯格の少年は指をパキポキ鳴らしながら、足をくじいて動けなくなった三樹に近づいた。
「誰か、三樹ちゃんを助けてー!」
「誰も来ねーよ!」「どうかな?」
少年が三樹に殴りかかったところで蓮が止めにはいった。
「弱いものいじめするヤツが一番弱いって知ってる?」
「わぁ、蓮くんだ!それに新太くんもいる!」
「…おまたせ。」
この当時、蓮と新太は同学年内で女の子の間では絵本に出てくる王子さまのような扱いを受けていた。
「出たな、テニス野郎と引っ込み思案!」
「その胸に刻め、俺の名前!」
「僕、みんなを逃がすからお兄ちゃんはなんとか止めてくれる?」
「お兄ちゃんに任せろ!俺はいつかこの街最高のヒーローになる男だ!うぉぉぉっ!」
―そして現代、蓮に見つけられた後―
「三樹…今からお前に、俺の過去を話す。」
「…いいよ。口を挟みたいことは山ほどあるけど、最後まで聞いてあげるわ。」
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