11人が本棚に入れています
本棚に追加
/73ページ
「悪いと思っているなら、少しはこちらの懐事情に配慮してくれませんかね。……あの、古本屋で買うのはナシなんですか?」
「他人の手垢が付いたのはちょっと。」
「この贅沢者が!」
三十歳サラリーマンの給料、その限りある資金から家賃や食費、光熱費、その他諸々を捻出しているというのに。
「冗談だよ。だいたい、本に触るのは私じゃなくて君だしな。」
「それなら、何で古本はダメなんですか。」
後藤さんは一息ついてから
「本を書いてくれた人に利益が還元されないから、だ。」
ふざけてばかりの後藤さんの、珍しく真剣な言葉だった。
最初のコメントを投稿しよう!