3.心のままに

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「随分懐かしい夢だったな……。」 寝起きに発した声は(かす)れていた。喉が痛い。体の節々が痛い。頭がぼーっとする。寒気がする。 「典型的な風邪の症状だな。少々の雨に打たれたくらいで情けない。」 後藤さんの言葉には呆れが混じっていた。いや、普段ならこれくらいで体調を崩すことはない。誰かさんのせいで睡眠不足の状態が続いて、抵抗力が下がっていたからだと思う。 「ゴホン。ま、まあ、今日は休日だからゆっくり休むといい。」 多少責任は感じているみたいだ。後藤さんはそれっきり静かになった。 辛い体を叱咤してベッドを抜け出し風邪薬を探した。見つけたそれのパッケージには「食後に服用」と書いてあるが、今は何も食べられそうにない。仕方なく空っぽの胃の中に水で流し込んだ。 その後はベッドに戻り、布団を被って泥のように眠った。目が覚めたのは、窓から西日が差し込む頃だった。朝よりは楽になったものの、依然体調は思わしくない。しかし、そろそろ何か口に入れないと。横になったままぼんやり考えていると、急に怠さも熱っぽい感覚も消え失せた。
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