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「は?」
話の展開が予想の遥か斜め上の方向にぶっ飛んで行った。
「アンタには黙ってたけど、一年前に旅行先で知り合った人と気が合ってね、お付き合いしてたの。向こうも奥さんに先立たれてからはずっと一人身だったんだけど、『この歳になって、もう一度家族になりたいと思える人に出会えた』って言ってくれて。この前、プロポーズされちゃった。」
「そ、そうなんだ。」
母は困惑する俺の心中を察したのか、それ以上その話をすることはなかった。
この歳で母親の再婚話を聞かされるなんて思ってもみなかった。俺は良かったねとも、おめでとうとも言えなかった。何で今更という言葉は、ぐるぐると渦巻く得体の知れない感情と一緒に飲み込んだ。
親父が交通事故で死んだのは俺が三歳の時。もう二十七年が経つーー
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