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「後藤さん、前に奥さんと子供がいるって言ってましたよね。」
「ああ。」
「こんなこと聞くのは失礼かもしれませんが、もしも奥さんが再婚することになったらどうします?」
「どうするって言われてもなあ。君の体を借りて、恋路の邪魔でもしてみるか。」
後藤さんは揶揄うように言った。
「それは困ります!そうじゃなくて、どんな気持ちになるのかなと。」
「君も妙なことを聞きたがるね。そうだなあ。オジさんも人間だから、やっぱり少しは寂しいと思うだろうな。でもそれ以上に、彼女には幸せになってほしいから受け入れるよ。……心から祝福はできないが。」
「後藤さんでも嫉妬するんですね。」
「そりゃ、そうだよ。ああ、想像したら何だか切なくなってきた。」
「慰めてあげましょうか?」
「ほっといてくれ。」
いつも余裕たっぷりの後藤さんが、今回ばかりはすっかり萎れてしまっている。しばらくそっとしておいてあげよう。そうして、ひとしきり落ち込んだ後には、彼が元気になれる場所ーー本屋へ行ってみるのもいいかもしれない。
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