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特殊風俗監理係は旧警視庁だけに設置された部署だ。係を束ねるのは女性のアルファだが、彼女以外の職員は全員ベータで構成されている。今回のように、各署の生安からの要請でオメガが関係しそうな案件の場合に出動し、捜査に協力する。
日本最大の歓楽街がある東京全域を担当する征司達は、文字通りに家に帰れないほど忙しいのだ。
「俺達、一般人の警察官にはアルファに対する捜査権がないから、どうしても特風に頼らないといけなくなる。新警視庁の連中は仲間には手錠をかけてくれないからな」
「それ以前に、旧警視庁主導のガサ入れの応援なんて来てくれねえよ。あいつらはお上へのご機嫌取りと面子を保つことだけに必死だ。泥臭い捜査は俺達に丸投げだし、そもそもオメガのいるところになんか怖がって来やしねえさ」
確かに、と笑った高田の顔がバックミラーに視線を向けた途端に強ばった。
「誰かこっちに近づいてくる」
後ろを確認しようとする前に後部座席の窓が軽く叩かれた。一気に緊張感が走ったが、暗がりの中で辛うじてノックした人物の顔を確認すると力が抜けた。
「知り合いだ。開けてやってくれ」
後部座席のドアロックが解除されると、男が音もなく車内に入り込んでくる。まだ若い男だ。柔らかそうな髪は湿気のためかふわふわと跳ね、着ているコートからは冷気が立ち込めていた。
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