【1】討ち入りは聖夜に

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「僕としてはとてもいいタイミングです。でも、佐久間さんには同行することを相当渋られたんですけどね」 「当たり前だ。こっちはただでさえ忙しいのに素人の、それもエリート様の面倒なんかいちいち見ていられるか。美玲(みれい)に体よく押しつけられたから、仕方無く連れ歩いてるだけだ」 「押しつけられたって、お前は本当に口が悪いなあ。こいつの言うことなんて気にしないでくださいね、神代監察官」  フォローに走った高田の顔を睨みつけると後部座席の神代から、ふふふ、と笑いが聞こえた。 「佐久間さんの毒舌に慣れないといけませんね。それに僕のことは呼び捨てでかまいませんよ。お二人に比べたら経験も年齢もまだまだな若輩者なんですから」 「そうだぞ。いくらエリート様だからって、若造にゴマを擦る必要ない。それにベータのキャリアアップはどこの省庁でも課長止まりだ。擦るだけムダだぞ」 「……お前、いい加減にその憎まれ口なんとかし……」  高田の小言をシッと指を立てて遮る。最寄り駅の方向から、こちらに歩いてくる人影が左のドアミラーに映っていた。  三人で体を小さくして気配を殺す。人影は背の高い男だった。ネオンに照らされたその姿は、この路地には不似合いなほど身綺麗な(なり)をしていた。高そうなスーツと手に提げているブランドのバッグ。若いエリートビジネスマンのテンプレだ。  男が征司達の車の横に差し掛かった。途端に印象的な匂いが鼻をついた。  ――相変わらずクッセエな。   車の横を通りすぎた男の残り香を追うように小さく鼻を鳴らす。
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