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「お前が移り気するなんてねぇ。意外だけど、なんか安心したよ。で、そいつとはどこまでいった?」 「もう黙れよ」 「キスした?」 「……」 「ヤッたか」 「殴るぞ」  司はいよいよ本気になったが、五十嵐はその反応すら楽しんでいる。 「『殺すぞ』って言わないところが、司っぽくて尚更怖いね」  呆れた司は、紅茶分の小銭を机に置くと席を立った。五十嵐が慌てて追いかけてくる。 「そんなに怒らなくてもいいだろ」 「くどいんだよ」 「いつもなら適当に受け流すじゃねぇか。らしくないな」  そう言われてようやく冷静になった。五十嵐は「そうだろ?」と言わんばかりの微笑を浮かべた。目の前にあるコンビニに気付いた五十嵐は「待ってろ」と言い、一人コンビニに入った。司はそのあいだに深呼吸をしながら心を落ち着ける。戻ってきた五十嵐に、何かを投げ渡された。絆創膏だった。 「それ、ちゃんと冷やしとけよ」  右手の甲をトントンと叩いて、五十嵐は去った。会社でホットコーヒーをかけられた時に出来た火傷のことを言っていた。たいした傷でないので手当てせずにいたのだが、時々ヒリヒリと痛むのを五十嵐は気付いていたらしい。  悪い奴じゃないのだ、と絆創膏を見ながら思った。
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