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「みんな寄り道するみたいだけど、君は行かないのか? えーと……」 「笠原です」 「そう、笠原」 「俺は今日、夜から用事があるんで」 「まだ昼前だぞ。時間があるじゃないか」 「大抵、部活終わりの寄り道はみんな夜まで遊ぶんです。途中で帰ってもいいけど、中途半端に遊ぶと帰りたくなくなるので」 「へぇ」 「松岡先輩は行かないんですか? 山内先輩は行くみたいですけど」 「俺はもともと、大勢で遊びに行くのが苦手でね」 「団体行動が苦手なのに、よくバスケ部入りましたね」  言ってから「しまった」と思った。上下関係がやたら厳しい中学で、先輩に向かって皮肉のひとつでも言おうものなら必ず返り討ちに合うからだ。けれども松岡はまったく気にもせず、「そうだな」と笑った。 「じゃあ、俺達もちょっとだけ寄り道するか」  司は松岡に振り返り、見据えてから言った。 「だから、用事があるんですよ」 「夕方に戻ればいいんだろ? 行きたくないならいいけど」 「……行きます」 「行くのか」 「俺も、団体行動が苦手なんです」  二人は学校から少し離れた商店街まで自転車を走らせ、ゲームセンターやセレクトショップが並ぶアーケードに入った。どこか行きたいところはあるかと聞かれて「どこでもいい」と答えたら、松岡が好んでいるというコーヒーショップに連れられた。どこでもいい、と言っておきながらコーヒーは苦手だと言うと、松岡は「そうだろうね」と笑いながらフレッシュジュースを当然のように奢ってくれる。 「連れて来ておいてなんだけど、その格好は目立つから」  と言って、体操着のままの司に自身のシャツを羽織らせたり、松岡は気が回る男だった。
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