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 薄暗くなった頃に授業を終えて、帰宅の途に着いた。陽が沈んでも名残で西の空はまだ赤い。それも次第に薄くなり、家に着く頃には完全に燃え尽きた。 「笠原」  仕事帰りの松岡がアパートの前で待っていた。 「どうしたんですか」 「仕事が早く終わって、少し寄った」  家に上げようと思ったが、美央が来ることを思い出して、無駄足になったことを詫びた。 「俺が勝手に来ただけだから。俺も顔を見たらすぐ帰ろうと思ってたし」 「日曜、会えますか」 「勿論。迎えに来るよ」  「それじゃあ」と言っておきながら別れるのを渋っていると、松岡が先に動いた。トン、と触れるようにキスをし、首に腕を回して軽く抱き寄せた。 「つ……かさ」  聞き慣れた声が、疑うように司を呼んだ。はっとして振り返ると美央が茫然と立っていた。松岡は小声で「悪い」と言い残し、車に乗り込む。松岡がいなくなって暫くは二人とも距離を保ったまま動かなかった。
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