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「……大学からすぐ来たの?」 「今の松岡さんでしょ? 何してたの」  司の問いに答えずに問い詰められる。 「もしかして、司の放って置けない人って……松岡さん、なの……?」  美央は司に近付くや、両腕を掴んだ。 「いつからそういう関係なの!? 男の人だよねぇ!?」 「ごめ……」 「いつからなのよ!」 「最近だよ。俺だってもともと男が好きなわけじゃなかった」 「……好きなの?」 「どうして好きになったのか、自分でも分からない」  司の腕から美央の手が剥がれ落ちた。俯いて黙り込んだ彼女を見ると、今度こそ終わったと思った。それでも美央は下がらなかった。 「……今見たことショックだけど、わたしまだ諦めない」 「美央」 「わたしのところに戻って来るまで待ってる。結婚したいって言ったもの」 「これ以上、もう無理だよ」 「平気だよ。司の言う通り、距離を置くわ。だから」 「別れよう」  その言葉に美央の動きが止まった。 「あんなの見て、しかも相手が男だなんて平気なわけないだろ。幻滅して当然じゃないか。それなのに待ってるなんて言うなよ」 「嫌よ。司がしつこいのは嫌いなのは知ってるわ。だから今まで聞きたいことや干渉したいこともあったけど、我慢したの。わたしも束縛したくなかったから平気って思ってたわ。でも、今回ばかりは簡単に引き下がれない。しつこいって思われても、すぐに別れるなんてしたくない」 「でも」 「まだ別れたなんて思わないで」  どうしてそこまで拘ってくれるのか理解に苦しむ。眉間を寄せた無理やりな笑顔が痛々しい。けれども彼女にそんな顔をさせているのは、ほかでもない自分なのである。
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