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珍しく五十嵐から誘われた。駅前のコンビニで待ち合わせ、司がコンビニに着いたときには五十嵐は缶ビールを数本、購入済みだった。
「俺んち、すぐそこだから来いよ」
五十嵐の家は駅から十分ほど離れたマンションで、学生が一人暮らしをするには贅沢な部屋だった。ただ、片付けが苦手な五十嵐の部屋には服やごみが散らかっている。五十嵐は足でそれを除け、司が座るスペースを確保した。
「人を入れる時くらい、掃除しろよ」
「いいだろ、男同士なんだし」
五十嵐はビールを司に差し出した。司が受け取ると、続いて自分の分のビールを取り出し、軽快な破裂音とともに蓋を開ける。豪快に半分ほど飲んだあと、言った。
「まだ怒ってる?」
なんのことを聞かれているのか分からず、司は顔を顰めた。「このあいだの駅でのこと」と付け足され、ようやく思い出した。
「怒ってないよ。忘れてた」
「なーんだ。よかった」
「お前でも、そういうの気にするんだな」
「お前でもってなんだよ。俺はこう見えてデリケートなんだ。……あの時は悪かったなって、ちょっと反省してたんだぜ」
「なら、もっと早く謝れよ」
司は笑いながら返した。
「実はさ、あの時、なんでああいうこと聞いたかって言えば、友達に頼まれてさ」
「友達?」
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