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―――  汗ばむ日と肌寒い日を繰り返して陰鬱と毎日が過ぎた。  たいした怪我ではなかったと言っても、事故から体調が優れないことが時々あり、授業もあまりないことから、大学にはほとんど顔を出していない。体調が優れないのは事故の影響というよりも、気分的なものが大きかった。  欠席が続いた授業について、五十嵐から単位を落とすかもしれないと忠告を受け、およそ二週間ぶりに大学へ向かった。学生課の前で五十嵐に会った。会ったというより、待ち伏せされていたようだ。 「なんで最近、来なかったんだ?」 「色々あって」  いつもなら冗談交じりにしつこく問い質してくる五十嵐だが、司があまりに憔悴しているからか、からかってはこなかった。 「お前、就活とかで今までも欠席してる授業あっただろ。昨日の経済史、あと一回の欠席で単位落とすとこだったから代弁しといたぜ。今日のゼミも、卒論のこと言われると思うから呼んだんだけど」 「悪いな。……ありがとう」 「授業、どれくらい取ってんの?」 「あんまりない。去年の後期で落としたやつ取り直してるだけだから」 「へー、俺なんか外国語の単位も全然だから、今年すげー授業入ってるんだけど。真面目に勉強しとくんだったなー」  講義室への階段を上ろうとした時、五十嵐に後ろ襟を引っ張られた。危うく首が締まるところだった。 「危ないだろ」  五十嵐は渡り廊下を指差した。その先を追うと美央が立っていた。 「先に行っとく」  肩をポンと叩かれて、五十嵐は先に階段を上がっていった。「頑張れよ」と言われたようだった。 「来てたのね」 「うん……」 「今日、司の家の近くの公園に来て欲しいの。このあいだ、来てもらったとこ」  美央は司の目を見ようとしなかった。美央と言葉を交わすのは病室に来てくれた時以来だ。怒っているようにも呆れているようにも見えなかったが、彼女をひどく傷付けたのは事実なのだ。さすがにまだ待つとは言わないはずだ。どうせなら思い切り罵倒してくれることを願った。
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