運命の再会

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 頼まれたら断れない性格の私に、事情を説明して嫁がせるのは酷だと思ったらしく、血眼になって私が気に入りそうな相手を探し、自然な流れで結婚させようと企んだそうだ。  はっきり言って、状況は悲惨だ。  このご時世に、身売りみたいな結婚だなんて。  だけど、無駄に豊かな妄想力のおかげで、ショックは緩和されていた。  私にとっては、予想していた状況よりいくらかマシだ。  「…なーんだ。そういうことだったのか」  「奏音?…あんた、もしかしてー」  「まさか、何?」  「あ、ううん。なんでもない」 「そう?じゃあ、次のお見合いが決まったら、連絡ちょうだいね」  母が震える声で「ありがとう」と言うのを聞き終え、電話を置いたのと同時に、深い深い溜息が漏れた。  でも、これでいいんだ。  最近は、お見合い結婚する人たちだって少なくないし。  恋愛には不向きな私が、誰かと結婚して家庭を作るチャンスを、神様がくれたと思えばいい。  それにしても、母が白羽の矢を点てた相手が、よりによって羽立くんだったなんて。  神様も余計なことをしてくれる。 そういえば、羽立くんはどうしてお見合いの場にのこのこ現れたのだろう?  それを聞き忘れたのだけが心残りだ。  話も聞かずに逃げてしまったし。  もしかしたら、彼も何か困った状況に陥っているのかもしれない。 羽立くんが私とのお見合いを断らなかった理由が気になって、結局その後も、全く漫画に集中できなかった。  そして、眠る直前まで羽立くんのことを考えていたせいか、その日の夢は再現VTRみたいな、高校時代の私達だった。
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