彼の彼

1/11
5639人が本棚に入れています
本棚に追加
/215ページ

彼の彼

母から連絡があったのは、羽立くんとのお見合いのわずか三日後。 そのスパンの短さに、父の会社の置かれている状況の厳しさを思い知らされた。 速達で送られてきたいくつかのかの釣り書に、今回は事前にしっかり目を通す。 最優先すべきは、父の会社への確実な資金援助だ。 一番年収の多い、7つ年上の会社経営者、「浅野さん」に決めた。 容姿については、生理的に受け付けないレベルでなければ問題ない。 そう思いつつも、念のためにお見合い写真を恐る恐る開く。 そこに写っていたのは 全体的に丸いフォルム 背は、私と同じか、ちょっと低いくらい 髪の毛は気持ち額のあたりが後退気味 ある意味平均的な30代半ばの男性だった。 顔の作りは、お世辞にもかっこいいとは言えない。 それでも、丸い眼鏡の奥の瞳が、とても優しそうな男性だった。 羽立くんとはまるで正反対だな。 そんな考えを頭から追い払う。 この人とだったら、漫画みたいな恋は無理でも、自分の努力次第で温かい家庭を作れるかもしれない。 意を決して母に電話すると、翌日には次のお見合いの日時と場所の連絡があった。
/215ページ

最初のコメントを投稿しよう!