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彼の彼
母から連絡があったのは、羽立くんとのお見合いのわずか三日後。
そのスパンの短さに、父の会社の置かれている状況の厳しさを思い知らされた。
速達で送られてきたいくつかのかの釣り書に、今回は事前にしっかり目を通す。
最優先すべきは、父の会社への確実な資金援助だ。
一番年収の多い、7つ年上の会社経営者、「浅野さん」に決めた。
容姿については、生理的に受け付けないレベルでなければ問題ない。
そう思いつつも、念のためにお見合い写真を恐る恐る開く。
そこに写っていたのは
全体的に丸いフォルム
背は、私と同じか、ちょっと低いくらい
髪の毛は気持ち額のあたりが後退気味
ある意味平均的な30代半ばの男性だった。
顔の作りは、お世辞にもかっこいいとは言えない。
それでも、丸い眼鏡の奥の瞳が、とても優しそうな男性だった。
羽立くんとはまるで正反対だな。
そんな考えを頭から追い払う。
この人とだったら、漫画みたいな恋は無理でも、自分の努力次第で温かい家庭を作れるかもしれない。
意を決して母に電話すると、翌日には次のお見合いの日時と場所の連絡があった。
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