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羽立くんの事情
急ごしらえしたおかずが並んだちゃぶ台を囲んで、話し合いが始まった。
「大体、付き合う前に言ったよな?俺、基本的に本気にならないって」
綺麗に手を合わせて「いただきます」と言ってから、羽立くんはロールキャベツに箸を伸ばした。
「言ったけど…昴、俺含めてずっと特定のパートナーが居たじゃん?アレも全部本気じゃなかったってわけ?」
「それは単にトラブル防止のため。一回刺されそうになったことあったから」
「…っ、じゃあ俺と付き合ってくれたのは、別に俺のことちょっとでも好きだったからじゃないんだ…」
「それなりに気に入ってはいたけど?あ、奏音さん、ご飯ください」
「じゃあ…見合いの件は?」
ご飯を盛ったお茶碗を手渡すと、羽立くんが私の目をチラッと見て、一呼吸置いてからポツリと言った。
「…昨年、兄が亡くなって」
「「えっ!?」」
宮本くんと私の声がキレイにハモった。
昔、羽立くんから聞いたことがある。
腹違いらしく、顔は似てないけど、とても優しくて優秀な自慢のお兄さんだと。
「事故で、あっけなく。俺、兄さんが居てくれたおかげで、遊んだり、会社作ったり結構自由にさせてもらってたんだけど。跡継ぎ候補がいなくなった途端、急に親が俺の素行を調べ始めて…バレた」
「バレたって…」
「晃と付き合ってること」
さっき、レストランで昴に切られたと叫んだりしてたので、周囲にもオープンにしているんだと思っていたけど、間違いだったらしい。
宮本くんの顔から、また血の気が引いていった。
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