三つの願い

2/4
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
 男は公園の片隅に、ブルーシートを張り合わせて作り上げたテントで暮らしていた。彼は働くことが大嫌いで、毎日ゴミを漁って生計を立てていた。  ある日、捨てられた粗大ゴミの中から不思議なランプを手に入れた。その形状は子供のころに絵本で見た魔法のランプにそっくりだった。まさかと思いながらも住処に持ち帰った彼は、恐る恐るそのランプをこすってみた。すると、目の前に異形の魔人が現れた。 「さあ、貴様の願い、どんなことでも三つ叶えてやろう」  それはまさしく魔法のランプだった。男は興奮しながらも必死になって考えた。叶う願いは三つしかない。慎重に選ばなければ。金と、女と、後ひとつ……見た目を良くするか、それとも頭を良くするか。永遠の命ってのもいいな。いやそれなら永遠の若さか……。そうだ。叶えられる願いの数をもっと増やすというのはどうだろう?  ところが男の考えを読み取ったかのように魔人が口を開く。 「ただし、願いの数を増やすってのはナシだ。いいか。三つってところに意味があるんだ。叶えられる願いは三つ。それ以上でも、それ以下でもない」  魔人は三本の指を立て、意味ありげな笑いを浮かべていた。  それならば、やはりまずは金だ。金さえあれば働かなくてもこんな生活から抜け出し、大豪邸に住むことだってできる。女だって金目当てに近寄ってくることもあるだろう。しかし彼はこうも考えた。金は使ったら終わり。どれだけ手に入れようともいつか消えてなくなるぞ、と。だったら金のなる木、というのはどうだ。果実のように金がなる木。金をもいでももいでも次から次へと金がなるのだ。これなら金を使ったところで尽きることはない。 「金のなる木をくれ」  魔人は「フム」とうなずいてから、指をぱちんと鳴らした。 「さあ、外を見るがいい」  住処の外に出ると、目の前に1メートルほどの高さの木が生えていた。 「おい、これが金のなる木か?」 「そうだ」 「金がなってないじゃないか」 「まだ苗木だからな。木が成長すれば実はなるぞ」 「実がなるまでどれくらいかかるんだ?」 「さあ。まあ三年から五年ってところだろう」  魔人はそこで嘲笑を浮かべると、 「言っておくが、金がなった木ではなく、金がなる木を望んだのはお前なんだからな」  クソッと男は腹の中で毒づいた。屁理屈をぬかしやがって。そんなに待っていられるか。こんなことなら最初に思ったとおり、単純に金を要求すればよかったんだ。さてどうする。二つ目の願いで金を要求しようか。だがそうすると一つ目と二つ目が重複して願いを無駄に一つ使ってしまうよう気がする。何かいい方法はないものか……。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!