「削りゆく16歳の少女」

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「削りゆく16歳の少女」

 高校2年に上がったばかりの穂乃花(ほのか)は学校に行きたくなくなっていた。  穂乃花は、同じ高校に通う1年先輩の御手洗(みたらい)(すぐる)と云う男子に恋をしていた。穂乃花と同じバスケットボール部に所属し、身長は185㎝、手足も長く、清潔感に溢れた爽やかな男子で、女子からの評判も良かった。穂乃花は1年生だった3月末に、勇気を振り絞って御手洗に告白した。  彼女が居ると云う理由でフラれてしまった。  失恋のショックで精神的に不安定な中、学年が上がって行われたクラス替えで、仲の良かった女の子グループの友達と尽く離れ離れになり、楽しかった1年の時と打って変わって、穂乃花はクラスの中で友達を作れず、浮いた存在になってしまった。  そんなことなど露知らず、子育てを妻に任せっきりの父は穂乃花に関心を向けることは無い。一方、穂乃花を何としてでも音楽大学に進めようと願っている母は躍起になっている。穂乃花は3人兄弟。上が男、下も男で、自分だけ女の子。すると、唯一の女の子である穂乃花に対する母の関心は尋常なモノではなく、男の兄弟が割とテキトーに育てられている(少なくとも穂乃花にはそう見えた)のと違って、穂乃花の母は長女への投資を惜しまない。学校の授業の後、部活動が終わった夕方の6時になると、平日は予備校に通わされる。水曜日だけピアノのレッスンがあり、土曜日にはこれまた幼い頃から続けているヴィオラのレッスンがある。日曜日は休みだが、ピアノやヴィオラの大会があれば予定は埋められるし、部活動との兼ね合いもあるから、穂乃花には自由な時間がまるで無い。  穂乃花に慢性的に付き纏っていたのは、精神的な不安定と肉体の疲労だった。毎日身体の節々の何処かが必ず痛くて、不眠症の如く眠れないのに眠い。起きていたい授業中にうたた寝して、教師から怒られることも増え、ストレスを日々溜めていた。
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