「恋の三角関数を解いた16歳の少女」

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「恋の三角関数を解いた16歳の少女」

 そう思い悩んでいた時、自習室の扉を開けて入って来る他の学校の学生二人が目に入る。学生二人は男女。二人は楽しそうに、自習室に入って机も隣り合わせに並んで座り、時々お喋りしながら楽しく勉強を始めた。他の男子学生の何人かが死んだ目で幸せそうな恋人達を眺めているのが、穂乃花には少し可笑しかった。  恋人達を見て、穂乃花は今日学校の廊下で見掛けた、恋に恋した女の子を思い出す。  もしかしたら、彼女はきっと孤独だったのではないか? 同性の友達が作れず、仕方なく異性の恋人を作らざるを得なかったのではないか。そうなると、あまりイケてない男子と敢えて付き合っていた彼女の行動にも説明が付く。  タンジェント(同性)から疎外されるなら、否が応でもコサイン(恋人)を作るしかない。  それが恋の三角関数の公理。 (嫌だ……) 今の穂乃花に御手洗以外の男子を好きになるなんて無理だった。それほどまでに御手洗は魅力的だった。  それもそうだが、クラスに居る男子も、今自習室に居る男子も、どいつもこいつもあまりにイモ過ぎる。  いや、性格は悪くないかもしれない。話せば良い奴も居るだろう。しかし、日本の男性には化粧と云う文化が基本無いせいで、女子と違って見た目を努力する男子が少な過ぎる。ぶくぶく太ったデブは論外として、髪はボサボサ、爪を切らずに黝ずんだ垢を中に残したままの男子も居れば、肌が汚い奴、歯並びを見ると黒い歯石を付けたままの男子まで居る。  本当に日本の男子高校生は、『女の子は清潔感を気にする』と云う常識さえ知らないほど情弱なのか?  しかも人権教育で『差別はいけない』と学校に教えられたせいで、 「見た目より中身を見てくれ」 とか、 「見た目で差別しちゃいけない」 とか男子達は思い込んでいる。自分達は可愛い女の子にしか興味を示さない癖に。 (嫌だ、こんな連中と付き合うなんて絶対に嫌だ……)  もし、「恋愛」と云う科目があったならば、穂乃花は男子生徒達を教室に並べ、拡声器のメガホンを向けて、教師として怒鳴り散らす。 「良いか! 愚かな男子達よ! 自分達は化粧も美容整形も行っていない、無農薬で栄養価も高い有機野菜とでも勘違いしているんじゃないか!? でも、土が付いたままの野菜を食べろと言われても、女子は食べられないんだよ! 女の子達と恋愛したいなら、自分と云う野菜をしっかり水洗いした後、ちゃんと美味しい料理にしてから来い!」 三角関数の答え「穂乃花を幸せにしてくれる素敵な男性は何処へ?」
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