きつね寿司

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きつね寿司

 お皿いっぱいに並ぶ黄金色のきつね寿司。おばあちゃんの得意料理だ。 稲荷寿司、おいなりさん、いなり、など地方によって呼び名は 違うらしいけど、おばあちゃんは『きつね寿司』と呼んででいた。  お祖母ちゃんのきつね寿司は、すし飯に細かく刻んだれんこんと かんぴょうが入っていて、とても美味しい。甘みと酸っぱさの 具合が絶妙なすし飯に、シャキシャキの具。思い出すだけで食べたくなる。 運動会や祝い事には、お祖母ちゃん手製のきつね寿司。 それが我が家の定番だった。  教師の仕事で多忙な両親に代わり、私を育ててくれたのが おばあちゃんだった。私はおばあちゃんが大好きだった。 「佳奈ちゃんは可愛いねぇ。おばあちゃん自慢の孫だ」  何があっても私を守ってくれた優しいおばあちゃん。 料理が得意で、笑顔を絶やさない。 膝に乗ると、なぜか甘い香りがして、その香りに包まれるのが たまらなく好きだった。  大好きおばあちゃんの様子が、少しずつ変わっていったのは 私が中学三年生の頃だった。
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