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埋蔵金
日常とは退屈なものなのか、それとも、退屈なことを繰り返すからそれが日常となるのか。 でも、そんな日常も些細な事で一変する。
「おはようございます」
「おう、達也。お前、埋蔵金ブログ見たか」
バイト先の居酒屋に到着したばかりの達也の腕を同僚の正人が掴んだ。
「いきなりかよ・・・」
「ちょっと、コレ見て見ろよ」
「何、それ・・・」
クルマは急に止まれない、人の思考回路も急には切り替われない。 達也は焦る正人のツッコミには同調出来ず、半信半疑は生返事をするばかりであった。
「ネットで有名だぞ、埋蔵金書の地図が書かれたブログ」
「どうせガセネタでしょ・・・」
「一億当てた奴がいるって」
ユニフォームに着替えて少しは余裕が出来たのか、それとも、一億というキーワードが心のたがにヒットしたのか。 達也は真顔で正人の顔を覗き込んだ。
「ホントかよ、それ」
「ホレ、ここに動画かある」
正人はスマホを達也の顔面に差し出した。
スマホの動画には大金を手に入れた若者達の大喜びする姿が映し出されていた。
「噂じゃ、埋蔵金は全国各地にあるらしいぞ。オレ達も行こうぜ、埋蔵金探しに。他の奴が見つけ出す前に・・・」
若者たちの行動は時として理性よりも早い。その結果は時として理屈を超越した結果を生む。良し悪しは別として。
「おい、お前ら、職場放棄して何処に行く。戻って来い」
二人のフリーターは店長の言葉を無視して駆け出して行った。
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