ゴールドラッシュ

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 振り向くと女房がリモコンを手にしていた。 「いつまで休んでいるのだい、この甲斐性なし。リストラされてゴロゴロしているあんたを誰が食わしてやっていると思っているのだい。 何か知らないが、ありがたいことに外国人観光客が増えて、てんやわんやや。あんたも手伝いな。ネコの手よりは役にたつだろ」 「それはつまり・・・」    旦那は女房に今見たニュースの内容を 解説しようと身を乗り出した。  その態度にいつもの手より口の動く夫の行動を先読みしたのか、「屁理屈をこねてないで、さっさと働きな」間髪入れずに女房の檄が飛んだ。 「女は現実的だな・・・」  「なんか、言ったか」 「いえ、何も・・・」    夫は言葉を飲み込んだ。心の呟きも全てお見通しらしい。  でも、まあ、女房の言う通りかも知れない。 「すまん、オレ、明日から在宅だ」    言いにくかった会社をクビになったと言う言葉、それでも、女房はそれで気づいてくれたのか、再就職が決まるまでの繋ぎだと始めた民泊ビジネス。    その後、再就職活動を続けるが、五十前のリーマンには狭き門。あなたは何が出来ますかという問いに対して『部長なら出来ます』と答えたという笑い話も身につまされる話。元の会社では総務部長の肩書だったが、民泊事業では経理も女房に叶わず。  こんなオレでもやっていけるのは、女房殿のおかげか・・・。
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