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「いただきます」
「いただきます・・・」
箸をもって手を合わせた彼女に続いて、僕はおずおずと手を合わせる。
今、僕は最強に変な状況立たされている。
ゴールデンウィーク、地獄の十連勤が始まって以来の、いや、この会社に務めて以来の衝撃的な状況だ。
鉄の女こと佐藤さんと一緒に夜ご飯を作り、食べているのだ。
しかも会社で。
「どうしたんですか? 食べないんですか?」
「あっ、いえ」
僕は慌てて箸をとり、ご飯を口に入れた。
「う、うまっ!!!」
でしょう? と佐藤さんが目を細める。
「なにこれ、ほんとに肉みたいだ!!!」
食べたソレは、肉そのものだった。
口に含むと、鼻から抜ける生姜と、甘辛く香ばしい醤油や味噌の味が広がり、すごく美味しい。
「ナゲットも、どうぞ」
そう言われ、忘れかけていた木綿ナゲットを口に入れた。
「はうっ!!」
口に入れた瞬間、サクリと音がして、じゅわりと醤油の味が口に広がった。
なにこれ! なにこれほんと、なにこれ!!!
「ふぇふぅふぅふぇ!!!」
「落ち着いてください、水いります?」
差し出してくれた水を一気に飲みほす。
「すっ、凄いです・・・。木綿豆腐が肉になるなんて・・・、佐藤さん魔法使い・・・」
そういうと、佐藤さんはふふっと笑った。
「大袈裟ですよ」
「あ・・・」
今気づいた。
佐藤さん、笑うとエクボ出来るんだ・・・。
「可愛い・・・」
「え?」
「えっ! いや!!! 何でもないです! 」
思わず漏れた心の声をかき消すように、僕はそぼろご飯をかき込んだ。
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