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「はい、分かりました。日野さんがもし、何かしてきましたら、直ぐにクロにお伝えします」
「はい!! その時は直ぐにでも噛み付いてやりますのでご安心ください!!」
知らせるにしても、連絡手段がないのでは意味がないだろうに、という疑問が口にでかけたが、その言葉も飲み込み、クロとさとりの遣り取りを聞き流す。
「では、さとり様。行ってまいりますのでこれにて失礼します。お見送りはご無用。本当に直ぐに帰ってきますのでご安心下さい」
「はい、分かりました。それでは、戻ってきた折にはお礼にブラッシングしてあげますね」
「念入りに!! 首から背中にかけてお願いします!!」
ブラッシングと聞いて喜ぶあたり、妖怪とはいえ、本質的な所は犬と変わらないのだろう。人間の姿だったら満面の笑みを浮かべていただろうと思いながら、さとりと一時の別れを告げたクロが、そのまま部屋の外へと退出するのを見送る。
部屋に残されたさとりはというと、クロの後姿を手を振って見送り、そのままさてと間を置き、修市に振り返り、食事の準備をしますのでご一緒に来て下さいと言った。
クロが地霊殿を出て少しした後、朝食を済ませた修市とさとりは、食後の一服を嗜んでいた。
「成程、此処には古明地さんとクロさん以外にも妖怪がいるんですね」
「はい、クロの他にもう三人、一人は火車の火焔猫 燐。私達はお燐と呼んでいます。彼女は怨霊や死体と会話……そうですね、意思の疎通ができる能力を持っていますので、灼熱地獄跡で怨霊の管理を任せています。もう一人は霊烏路 空。この子はお空と呼んでいます。彼女には灼熱地獄跡の温度調整を任せています。そして最後に、実はですね、私には妹がいるんです」
「妹……ですか」
驚きの事実である。しかし、妹がいるのであれば、今の様に面倒見が良い性格も頷けるのかもしれない
「はい、名前をこいし。とても自由奔放な所があるので、姉としてはとても心配しているのですが、気が付けば此処に帰ってきているので、もしかしたら日野さんが地上に上がる前にお会いする事が出来るかもしれません」
「その時は一度、ご挨拶をしたいですね」
「はい。きっとあの子も貴方に興味を持ってくれるかもしれません」
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